精神療法

 一概に精神療法と言っても、カウンセリング、心理教育的アプローチ、自律訓練法、行動療法、森田療法、認知療法、生活技能訓練など、病気の種類や症状によってたくさんの種類があります。

 軽症例以外は、ほとんど薬物療法と並行して行われます。

ここでは精神療法として、うつ病の方に良く使われる「認知療法」について説明します。

 「認知療法」とは簡単に言ってしまえば、マイナスの感情を「思考の訓練」によって「プラスの感情」にみちびく療法の事です。

 うつ病に対して、抗うつ薬と同等か、それ以上の治療効果があると証明された初めての精神療法です。

 「感情のコントロール」が主な目的で、自分が「そう感じている事」は本当に「そうなのか?」という自分に対する疑問から出発します。

 自分の感情を理解し、マスターしようとする人にとても役立つ療法といえます。

 うつ病の治療法として注目を浴び、その後、パニック障害、摂食障害など様々な病態に対して効果を持つことが実証的な研究により明らかになってきています。

 認知療法が有効と言われる疾病には、うつ病、パニック障害、強迫性障害、精神分裂病、パーソナリティ障害、薬物乱用、薬物依存、摂食障害、身体疾患(肥満・がん)等があります。

 人間の心理状態は、認知・行動・感情の三つの要素と、それらの相互作用から成り立っていると考えられます。

 認知療法とは、その三要素のうちの「認知」に注目し、認知を修正することによって、落ち込みや不安など感情の障害や、強迫行為など行動の障害を改善しようという心理療法の一種です。

 認知療法は1970年代ごろからアメリカやヨーロッパ諸国、日本など世界 中で広く用いられるようになってきており、うつ病やパニック障害などにおいて、その治療効果が科学的にも実証されている治療法です。

 基本的な治療の進め方は、次のようなものです。

 1.症状につながる認知や行動や感情のパターンを把握する。

 2.症状につながらない、すなわち適応的な方向に、認知を修正する。

 3.患者さん自身が、認知を把握し、修正する方法を身につける。

 4.治療者の援助がなくても、自分でコントロールできるようになり、治療を終結する。

 はじめは、薬物療法と認知療法を併用し、認知療法が1から4まで進み、患者さんがセルフコントロールできるようになった時点で、服薬を徐々に減らしていくのが、安全なやり方です。

 様々な研究により、うつ病やストレス性の障害、パニック障害などの不安障害、強迫性障害などでは、薬物療法と認知療法を併用することが、もっとも効果的で回復が早く、そして再発率が低いという結果が出ています。

 認知療法では、患者さんと治療者が「チーム」を組み、活発にコミュニケーションを取りながら進めていくことが重要です。

 ですから、もしあなたが認知療法を受けることになったときは、治療者(医師やカウンセラー)とよく話し合い、問題や治療目標を明確にして、治療に取り組んでいってください。

 ご自分の希望や治療への疑問なども、遠慮せず治療者に質問したり、お話しするようにしてください。