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うつ病とは

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1.うつ病になる原因


 うつ病になる原因は、はっきりとは判っていません。
 通常うつ病は、生理学的にうつ病になる素質のある人が、性格的な条件やストレスなどの要因が重なり、発症するといわれています。ですからこれら生理学的条件、性格的条件、環境的条件が揃わないと発症しないともいえます。 
 生理学的な条件としては、ノルアドレナリン、セロトニンなどの脳内化学物質の働きが悪くなりやすい体質をもっていることがあげられます。
 性格的条件には(さまざまな性格分類がされていますが)社交的で親切、明朗で活発、物静かで気弱、几帳面、仕事熱心、強い義務感、徹底性、正直、秩序にとらわれる、正確癖、まじめ、献身的、高い自己要求水準、などがあげられます。
 環境的条件には、過労、心理的葛藤、出産、月経、その他の疾病などのストレスがあげられます。
 こうやって見ていくと、まじめで仕事熱心な人ほどうつ病にかかりやすいことがわかります。
 うつ病は心の風邪と言われますように、決して希な病気ではありません。
 人口あたりの出現率は5%前後です。
 しかし、心の風邪というのは、珍しい病気ではないという意味であり、ほっておくと最悪自殺 に至る場合もある恐ろしい病気である事を忘れてはなりません。
  また、”こころ”という正体の判らないものの病気ではなく、脳の機能不全が引き起こす明らかな脳の病気です。
 脳という体の病気だからこそ、服薬と何よりも十分な休養が必要です。
 決して気のせいではないし、気の持ちようで治るものではありません。

※脳の機質的異常(脳腫瘍、パーキンソン病など)や脳以外の体の病気(甲状腺機能低下症、亢進症、更年期障害、その他)が原因でうつ病になることもあります。

2.うつ病の症状
(1)精神症状 感情面の症状

ゆううつ感、躁うつ気分、悲観的、不安感、いらいら感、劣等感、取り越し苦労、後悔、愚痴っぽい、心配性、人に会いたくない、罪悪感、自責感、自殺念慮、何をしても楽しくない、焦燥感

(2)思考面の症状 思考力減退、集中力困難、記憶力の低下、判断力の低下、考えがまとまらない、決断できない、妄想
(3)意欲面の症状 おっくう、無気力、根気がない、興味・関心の低下・喪失、家事や日常生活ができない、ひきこもり
(4)身体症状 全身倦怠感、疲労性頭重、頭痛、肩こり、筋肉痛、眼精疲労、不眠、早朝覚醒、ときに過眠、食欲不振、ときに過食、性欲減退、胸部圧迫感、呼吸困難感、胸やけ、口渇、便秘めまい、耳鳴り、味覚異常、関節痛、四肢痛、しびれ感、冷感、頻尿、咽喉部異常感、体重減少、胃部不快感、悪心、嘔吐、胃部膨満感、腰痛、背痛
 あと、仮面うつ病といって、うつ病の症状が、身体症状(頭痛・めまい・肩こり等)としてしか現れない場合があります。
 身体的苦痛があるのに検査をしても異常が見つからない場合、仮面うつ病である可能性が大です。
 この場合、うつ病の治療をすれば、身体症状も治ります。
3.治療方法(基本的には、ひたすら休養し、薬物療法を続ける事です)
(1)病院の選び方  精神科もしくは心療内科を受診してください。
 最初は町医者のほうがいいと思います。
 大病院は多くの患者さんをさばく必要があるため、話を聞いてくれる時間を十分に取ってくれない事もあります。
 町医者の出来れば予約制のほうが話を良く聞いてくれると思います。
 最近はストレス外来という窓口を持っている病院もあって、そこも良いかもしれません。 
 ただ心療内科は実質、内科の医師がやっているような所もありますから、精神科の専門医にかかるようにしましょう。
 各地の保健所や精神保健福祉センターに相談すれば、病院を紹介してもらえます。
 病院を検索出来るサイトもあります。
 ただ、ネット上の病院検索サイトの情報は病院の自己登録である事がほとんどだと思いますので、そこに載っているからいい病院とは限りません。
 
 この病気の治療には医師との相性も非常に大事です。
 中にはうつ病を理解していない、ただのお説教おじさん、ご相談おばさんみたいな医者もいます。
 病院検索サイトに載っていて、地元テレビなどでも紹介されて有名になった医者でも、希死念慮のひどい患者さんに暴言を吐いていた例を知っています。 
 理不尽な事を言うような医者に当たった時は我慢せず、あきらめずに他の病院を訪ねてください。
 もちろん、初診では、医師を信頼して、元気なふりなんかせず、正直にありのままの苦悩を医師に伝える事が大事です。
 治療というのは信頼関係であり、医師と患者の共同作業です。
 良い医師であるほど、患者さんが信頼してくれれば、それに答えようとしてくれるでしょう。
 なかなか自分の事をうまく口頭で説明する事もしんどい時があると思います。
 そういう時は、あらかじめメモに自分の症状や辛い事を書いて行く事をお勧めします。
 診察前に医師に読んでもらうよう、受け付けに渡してもいいでしょう。
 例えば、自分の生い立ちや愚痴っぽい事を書いても、真面目に読んでくださるかどうかで、その医師が信頼できそうかも分かると思います。
 うつ病の診断は血液検査のように定量的に出来るものではなく、患者さんのあらゆる面から総合して判断する事が大事だからです。
 患者さんの話を真面目に聞かない、なぜそうなったのか患者さんにも説明できないような事を執拗に聞く、患者さんの目も見ない、そんな事は誰にでもある事ですよ、なんて事を言う医者、自分が知らない事は最初から無いもののように扱う、そういう医者はダメ医者でしょう。(トラウマを認めない、「人格障害の患者さんなんか来た事ないよ。」なんて医者もいるらしいです。)
 科学的な観点から薬を処方する事はもちろん必要ですが、それ以上に大切なのは、患者さんの話を良く聞き、患者さんのあらゆる態度から、患者さんの内面を、痛みを理解しようとする真摯な姿勢があるかどうかです。
 また、患者さんの家族をはじめ、周囲の方への説明やケアも忘れないのが良い医師だと思います。
(2)こころがけ  まず自分は病気なのだという事を認めましょう。
 中にはどうしても認めたくない人もいます。 
 それは世間一般の見方に縛られているのです。
 うつ病は普通の病気だという事を、自分に言い聞かせましょう。
 内臓を悪くして、ほっておく人がいないように、うつ病も精神科に行かなくては治りません。
 うつ病は脳という臓器の病気です。
 気合いや根性で治るものではありません。
 最近は世間一般にもうつ病は知られるようになって来ています。
 自分で偏見を持つのはやめましょう。
 自分の弱い部分を認め、克服しようとする事こそが強さです。
 目をそむけても病気は治りません。
 もちろん、自力で克服などは出来ませんから、ちゃんと治療を受けてください。
 自力で克服出来るならば、それは病気ではありません。
 どんなにどん底であっても、絶対に治るという事だけは信じて、自暴自棄になったりしないでください。
 周囲の助けは必要です。自暴自棄になっては、その助けももらえなくなります。
 辛すぎて、アルコールに逃げたくなるのもよくある事ですが、薬とアルコールの併用はいけません。
 お互いの作用、副作用を強めてしまうので、医師の正しい診断の妨げとなります。
 また、薬もアルコールも肝臓が代謝しますので、肝臓に多大な負担がかかり、肝臓に一生残る障害を抱える事にもなりかねません。
 たしなむ程度でも、必ず医師と相談なさってください。
(3)うつ病時の決定事項  うつ病の時に考えて出した結論は、病気の脳が考え出した結論です。 
 けっして、その結論には従わない
ようにしましょう。
 会社を辞職するとか、離婚するとか、自殺しようとか、そういう重大な決定事項をです。
(4)診療中の注意事項  治療するには、 充分な休養を取ってください。 
 医師に診断書を書いてもらって、最低でも1ヶ月、出来れば3ヶ月は休んだほうがいいでしょう。
 そして、医師の指示通りの処方で服薬を続けてください。  
 自分の判断で勝手に服薬量の加減をしてはいけません。(頓服の抗不安剤などはその時に自分で増減できると思います。そのやり方も医師に確認してください。)
 軽傷ならば、仕事を続けながらでも、治療出来ます。
 外に出る事も、ままならない重傷の方は服薬を続けながら、家でただ寝ているしかありません。
 そして、気力(ちょっと散歩しようとか、インターネット見てみようとか)が出てくるのを待つのです。
 うつ病になる方は根がまじめなので、休養を有効に使おうとしますが、それは間違いです。
 ”何もしない事”が休養です。
 経済的な理由などから、簡単に会社などを休めないという方も多いと思いますが、それは真面目な方特有の思いこみです。
 ひとり抜けても会社などの組織というものは何とか動いて行くものです。
 組織としても、いつ休むか分からない状態よりも、きちんといつまで休むと決めてもらったほうが、それなりの対応も出来るんです。
 傷病休暇という、ある程度の給与を保証してくれる制度を持っている会社も多いですし、健康保険に入っていれば、傷病手当というものもあります。
 また「自立支援医療費制度」という、通院費が格段に安くなる制度もあります。(詳しくは、下にある「5.自立支援医療費制度のご案内」を参照ください。)
 休む手段を見つけてください。あらゆる福祉制度を使って無理をしてでも休むようにしてください。
 
(5)具合が良くなって来た時の注意事項  具合が良くなったからといって、自分で 勝手に薬の服用をやめるのは厳禁です。
 反動でますます、うつがひどくなったり、再発したりします。
 薬を減らす時も、必ず医師の指示に従いましょう。
(6)治療経過の例(管理人YASUの場合)

 私はうつ病発症時、会社に5ヶ月間の傷病休暇を貰い、休養していましたが、その間、心療内科の医師から最初に処方していただいた抗うつ剤をずっと飲んでいました。
 でも、その休養の期間中も全く症状は改善せず、毎日絶望感に責め苛まれながら、ただ無為に過ごしていました。
 そして、取り敢えず復職しましたが、症状は全く改善していませんでした。
 そして、医師に怒りをぶつけるように、「早くなんとかしてくれ」と頼みました。
 すると、精神科の専門医を紹介してくれました。(今までの医師は内科と心療内科を兼任していましたが、精神科の専門ではなかったという事です。)
 そして、紹介された病院に仕事はしながら、通い始めました。
 その病院の医師は、まず私の話を良く聞いてくれたあと、抗うつ剤として、トフラニール、抗不安剤として、レキソタン、睡眠導入剤として、ハルシオンを処方してくれました。
 そして、もうひとつの抗うつ剤として、まずルボックスを処方し、2週間程度飲んでも効き目がないなら服薬量を増やし、それでもだめなら他の抗うつ剤に変えていくという事を繰り返してくれました。
 なぜなら抗うつ剤にも何十種類とあって、どれが効くかは、人によって違うからだという事でした。 
 要は効き目のある抗うつ剤を見つけだす作業を始めた訳です。
 抗うつ剤は副作用はすぐに現れますが、効果は2週間〜1ヶ月しないと現れません。また人によって違うのですが、ある程度量を飲まなければ効果が現れません。
 そして、5ヶ月後、それはノリトレンという薬でしたが、それを飲んで4日目に、頭の中の霧がぱーっと晴れ上がるのを感じ、この世が全て見渡せるような感じを受けました。 
 それまでの絶望感が嘘のように消えました。
 私の場合、このように劇的に治癒しましたが、かなり特別な例だと、今は思っています。
 普通は、薬物療法の効果が認められたら、並行して精神療法 (考え方や気持ちを整理することによって、精神的な苦痛を軽くするものです。)などを必要に応じて行い、少しずつ治癒させていくようです。
 うつ病の症状の直接的原因は脳内化学物質の働きが悪くなるためですが、発症の誘因となるストレスを受けにくくして再発を防ぐため、また自分自身の内部にトラウマのようなストレス源を持っているような方には精神療法は必須だと思います。
 とにかく、私はこの経験から、うつ病は必ず治る のだと言っているのです。

※:弊サイトのリンク集にもある『Dr 林のこころと脳の相談室』は大変ためになりますので、是非ご一読をお勧めします。(特に精神科Q&A)

4.うつ病患者の周囲の人の心得
(1)ご家族は一緒に受診してください  まだ自分の状態を認められない患者さんは医者の前でも元気なふりをしがちです。
 また、しんどすぎて、医者に伝えたい事の半分も言えない事もあります。
 そういう場合、医師も診断を誤る可能性があります。
 出来れば一緒に行って、ご家族の目から見た様子を話してください。
 そして、患者さんへの対応も医師に良く聞いてください。
 人によっては精神科などに行く事自体を躊躇しがちですので、その場合はまずご家族の方が代わりに受診して医師から話しを聞き、病院の様子などをご本人に話して、安心させてあげてください。
(2)叱咤激励は決してやってはいけません  うつ病は頑張りすぎた人がなるのです。その上、頑張れとか言われたら、症状が悪化します。
 頑張れという言葉の中に、十分やっていない、まだ足りないんじゃないかという不信と、もっとやれとせき立てるようなメッセージを感じてしまうのです。
 ただ、そっとそばに居てあげてください。
 元気づけようと外に誘ったりを強要してもいけません。
 電話やメールの返事も強要してはいけません。
 患者さんが話さない限り、何故そうなったのか、原因を追及するような事もやめてください。
 見守るしかない事の多い、周囲の方にも非常に辛い病気です。
 患者さんのそういう状態にもどかしさを感じるようであれば、いっそ距離をおいてください。
 気力などの問題ではない、脳の病気なのだという事をご理解ください。
 そして、治りさえすれば、なんの後遺症もない病気なのだという事も。
(3)決してうつ病患者の状態を非難しないでください。  健康な人にはうつ病の人は、「なまけもの」みたいに見えるかもしれません。
 でも、その心の中は絶望感でいっぱいなのです。
 「しっかりしなさい」、「苦しいのは貴方だけじゃない」等も禁句です。
(4)自信を失うような事を言ったり、したりしてはいけません  ああ、やっぱり私はダメな人間なんだと思い、症状が悪化します。
 うつ病の絶望感はとてもつらく、息をするのも億劫になります。
 これはうつ病になった人にしか、絶対判らないと思います。
 だから「君の言う事は良く判る」等という慰めも逆効果です。
 将来にも希望がまったく持てません。
 物事への興味は失われ、趣味も楽しめません。
 仕事も手に着かず、自分が価値のない人間に思えてきます。
 「私に出来る事があれば言ってね」と手を差し伸べてあげてください。
 治療しなければ、また、医師の指示に従わなければ、うつ状態は何年も続くこともあります。 自殺の心配もあります。
(5)決断を求めてはいけません  日常で例えば、「何が食べたい?」とかではなくて、「カレーにしようか」と言ってあげてください。
 その他、引っ越しとか高価な買い物とかの大事な決定は先延ばしにしてください。
(6)負担を減らしてあげてください  家事などが負担になる事も多いので、出来る限り協力してあげてください。
(7)患者さんが自殺をほのめかす場合

 ただひたすら、その辛い気持ちを聞いてあげてください。その感情を認めてあげてください。
 自殺したいという気持ちをすぐにでも止めたい、生きなければならないんだ、もう死にたいなんて言うなと言いたくなると思いますが、それは患者さんのためではなく、そうする事で周囲の人が安心したいからです。
 ひたすら聞いて、辛いんだねって言ってあげてください。
 でも分かるよと言ってはダメです。希死念慮のある人の辛さはご本人以外分かるはずはないんです。
 話してくれている間は自殺はしませんし、辛さを認めてくれると分かれば、やがてこちらの考えも聞いてくれる余裕が生まれてくると思います。
 変に正論で自殺を止めようとすると、ああやっぱり分かってもらえないんだと絶望するかもしれません。
 もう正直な気持ちを吐き出してはくれなくなるでしょう。
 吐き出しがなくなると、一見落ち着いたように見えるかも知れませんが、それが一番危ない時です。
 ひたすら聞いて、吐き出してもらって、辛い気持ちを昇華させなければなりません。

 そして、その辛い気持ちを話してくれた事に、「ありがとう」と言ってあげてください。
 死にたい気持ちを言わないではなくて、死なないと約束してくれるなら、それは約束してもらっても構わないと思います。
 その際に 「こうだから死んではいけない」などの正論、一般論ではなく、 「私は死んでほしくない。悲しいから」など、あなた自身の思いを伝えてください。
 それが、患者さんがひとりで決行しようとする時に、思いとどまる理由になるかもしれませんから。もちろん、無理に約束させてはいけません。
 自殺しないように常に注意して、なるべくそばにいてあげることが必要です。
 ほんとに危ないような場合は自殺を防止するために入院させる事も必要です。
 支える側もほんとに疲れ切って、そういう状態の患者さんについ辛くあたるような事もありがちです。
 入院させるという事を見捨てるように感じる方も多いと思いますが、そうではなく、お互いのために、それが必要になる事もあります。

                愛する人を亡くされた方へ

5.自立支援医療費制度のご案内
 

 詳しい情報はこちら→厚生労働省:自立支援医療について